日本における食品ロス問題と自分でもできる取り組み

食品ロス
沢村愛弓

世界中で毎日、様々な理由から食品は捨てられています。こうした「食品ロス」にまつわる問題は知ってはいるものの、どこか別世界の話のような印象を持たれている方も少なくないでしょう。

例えば、「捨てられていく食品が原因で地球の温暖化に影響している」ということはご存知でしょうか?

このように、今回は捨てられていく食品にスポット当て、食品ロスがどのような問題を引き起こしているのか、その現状と原因を日本の事情を交えてご紹介していきます。

目次

食品ロスは地球にも悪影響

国連環境計画(UNEP)が公表した「UNEP Food Waste Index Report 2021」によると、世界全体を対象とした家庭やレストラン、お店などにおいて9億3,100万トンもの食品が廃棄されています。これは、10トントラック約9300万台分に匹敵する量で、消費者が利用できたはずの食品が一切利用されることなく捨てられているとのことです。

食品ロスは、家庭において61%、外食産業は26%、小売店で13%がそれぞれ廃棄されており、これらの数値は世界国別でみても先進国も途上国も問わず、類似した結果が出ているとのことです。

また、こちらのレポートには、「食品ロスランキング2021」と題する国別のランキングも記載されており、1位の中国が約9100万トンで、インドの約6800万トン、ナイジェリア約3700万トンと続き、日本は約815万トンの14位となっています。

食品ロスは、ただ「もったいない」で片づけられる問題ではなく地球の環境にも大きく影響を与えています。廃棄された食品は、最終的にゴミとして処理されることとなります。

これらのゴミは焼却される過程で温室効果ガスが発生される要因となり、地球温暖化につながる環境問題に発展しているのです。世界で排出される温室効果ガスの約8~10%は、こうしたゴミとして処理された食品が関わっているとして問題視されている状況です。

日本の食品ロス事情

食品ロスについて、日本に焦点を当ててもう少し問題となる現状を掘り下げていきます。環境省のデータでは、2017年時点で日本国内における年間食品ロスはおよそ600万トンとの結果が出ています。

近年のSDGsをはじめとする社会問題を目にする機会が増えている影響もあり、2019年以降は、年間の食品ロスはおよそ570万トンまで下がってきているものの依然として問題であることは変わらない現状と言えます。

なぜ食品ロスは起こるのか?

食品ロスの問題対策には、やはりその原因を理解しておく必要があります。原因は一般家庭と飲食を取り扱う企業とでは、異なるため個別で列挙していきます。

家庭での食品ロスの原因

  • 食べ残し
  • 手つかずの食品
  • 食品の作りすぎ
  • 賞味期限切れ

企業での食品ロスの原因

  • 食品保管時
  • 低温物流の過程での不備
  • 厳しい食品外見的基準
  • 災害などの外的要因

環境省のデータでは、年間食品ロスの内家庭からは284万トン、外食産業は127万トン、食品製造業121万トン、食品小売業64万トン、食品卸売業16万トンとそれぞれの状況を公表しております。また、2020年においては、新型コロナウイルスによる影響も発生しました。

ロックダウンによる移動規制で食品の流通への悪影響、商品の過剰な買い占めなど、突発的な例とはいえ無視できない原因です。

食品ロスへの対策と取り組み

日本政府や食品メーカー、飲食店において、食品ロス改善に向けた様々な取り組みが実施されています。

フードバンク

農林水産省では、「フードバンク」という取り組みが展開されています。フードバンクは、食品メーカーなどにおいて食品自体に問題はないものの、印字ミスや過剰発注、破損などの理由から廃棄される商品を福祉施設や困窮世帯などに提供を促す活動です。

協賛する企業には、税制の優遇措置が適用されるなどのメリットもあり、流通過程での食品ロス削減にもつながる効果が期待されます。

販売期限の長期化

山崎製パンや、カルビー、越後製菓、キユーピーなどメーカーごとで設定する販売期限や賞味期限の延長措置も次々に実施されております。昨今の技術向上により商品のパッケージに酸素吸収ボトルやバリアフィルムなどを取り入れることで、商品の品質がより長期化できるよう改善が進められています。

ドギーバッグの導入

2019年10月に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が制定されて以降、「ドギーバッグ」を導入する飲食店舗が徐々に増えています。ドギーバッグは、飲食店舗側で客が食べきれなかった食品を持ち帰るため用意した容器です。

食品ロス削減の観点から見ても、店舗と客双方にメリットがあるものの、まだまだ食中毒を懸念する声も上がっています。

個人でできる対策方法は?

食品ロスに対し政府や企業が対策する中、一般家庭においても食品ロスを削減するために多くの対策が可能です。

  • 食品を買いすぎない
  • 調理の際は食べきれる分だけに留める
  • 余った食材の調理方法を、インターネットなどで調べる
  • 余った食材は冷凍保存
  • 外食の時は食べきれる量を注文する

これらの方法はあくまで一部ですが、どれも少し意識を持つことで誰にでもすぐ実践できるものではないでしょうか?

まとめ

冒頭でもふれましたが、現在世界各地で大量の食品が手つかずのまま廃棄されている現状です。これらの処理のため余分な燃料が燃やされ、温室効果ガスが排出され、大気の温暖化につながる上、廃棄された食品がゴミと化し土壌汚染となって自然破壊をも招いています。

SDGsの課題の中に「小売や消費者レベルでの一人当たりの食品廃棄を半減させ、生産やサプライチェーンで生じる食品損失を減少させること」が含まれており、2030年を目標に達成に向け各国での取り組みが行われています。

こうした状況下で、一人一人ができる対策と成果は小さいものかもしれませんが、それぞれが少しだけ食品に対して意識を向けて行動することは決して無駄にはならないはずです。

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この記事を書いた人

SDGsプロデューサー

企業や自治体が推進するあらゆる分野のSDGsをサポート。新しい視点でのSDGsをプロデュースすることが得意。

野菜ソムリエとして様々な媒体の料理監修やレシピ開発、編集業務に携わる中でSDGsに出会い、その魅力と重要性に気づいてSDGsの勉強をはじめる。現在はデータセクショングループ株式会社MSSで「SDGsプロデューサー」として活動中。

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