世界のある場所では、生活用水を求めて1日に数時間かけて移動が必要で、ある場所では水を求めて紛争が勃発し、ある場所ではトイレがないため病気が蔓延し命を落とす子供がいます。
SDGs17の課題の内「06.安全な水とトイレを世界中に」。
今回は、こちらのテーマを重点的に掘り下げていこうと思います。水とトイレに関する問題が世界に、日本にどのような課題が出ているのでしょうか?順次ご紹介していきしょう。
「水を汲むために8時間」水不足が引き起こす世界の問題
ユニセフのHPには、水源まで水を汲みに向かうひとりの女性の生活について取り上げた動画が挙げられています。これによると、この女性が居住地から水源で水を汲み、戻ってくるまでの所要時間は8時間でした。
ユニセフのレポートよると、世界には21億人もの人が綺麗な水を飲めない状況にあります。これは4人に1人が、下水処理が施されていない汚染されている状態の水を使用、あるいは飲料水としていることになります。汚染された水の中にはポリオやコレラA型肝炎、微生物が含まれており、飲み続ければ人体に悪影響が及びます。生活に必要な水を確保するために数時間かけ、手に入れたその水もまた衛生上の問題がある。そんな環境で生活を送る人たちがたくさんいる状況なのです。
また、水源が不足する地域においては衛生面の問題だけではありません。近隣地域間で、水源を確保するために紛争が勃発するケースもあります。地域間での紛争だったものがやがて川やダムの使用に関する権利問題に発展し、国家間での戦争にまで行きつく事態も発生しているのです。
トイレ不足による世界の問題
ユニセフの調べでは世界の3人に1人が、トイレで排泄ができない状況と言われています。トイレがない地域では、地面や川、袋や箱などで用を足すという方法が取られているのです。こうした状況は、その地域の人たちに身体的な悪影響を引き起こします。
地面や川、ハエを経由して、排泄物内に含まれている様々な細菌が蔓延し、下痢をはじめとする病気を引き起こします。
水が不足していることで、手を洗うこともできない点も要因の一つです。その結果、抵抗力が低い子供が命を落としている状況と言われており、その数は1日に1,600人に上るとのことです。
水不足の原因は地球温暖化が関係
一見して、水不足と地球温暖化に因果関係はなさそうに感じますが、その根拠となる原因をいくつかご紹介していきましょう。
降水量の激変
地球温暖化による影響として、まずは各国地域の雨が降る周期が変化してしまうことが挙げられます。
地域ごとの雨の降水量が不安定に増減することで、水源の水没や、ダムがうまく機能しなくなる事態が起こります。また、大雨や集中豪雨が洪水を引き起こし、水源が汚染されることで使用できなくなるケースも原因として挙がります。
干ばつ
地球温暖化により、一部の地域では降水量が激減し、大規模な干ばつが起こっています。地中海やアフリカ全土がその代表例です。水源が干ばつによる影響で消滅し、飲み水はもちろんのこと農業やなどへの被害にも発展しています。
海面上昇
南極の氷が溶けて海面が上昇しているという問題は、多く知られていますが水不足の原因とされているのはあまり知られていないでしょう。海面上昇は、地下水にも影響が発生します。
地下水に海水が入り込んでしまうことで、飲料水として使用されていた水が使用できなくなる事態につながっています。島国は特に海面上昇による被害が顕著であることから、日本においても無関係ではないということです。
日本の課題
ここからは日本に焦点を当て、まずは水に関する現状を把握しておきましょう。日本ダム協会のデータによると、日本の年間降水量は1,718mm。これは、世界平均のおよそ2倍の数値となります。
また、厚生労働省のデータから水道普及率は98%、トイレの普及率においても戸建、借家共に90%以上という結果となっております。数値から見てもわかる通り、実生活においても水やトイレに関する不便を感じたことはないのではないでしょうか?
しかし、水の使用上において日本には課題が挙がっています。
日本にせまる水不足の予兆
まずは、水不足の点において、一見して日本は無縁のように感じることでしょう。
ところが「降水量の激変」項目でもふれた地球温暖化による影響が、近年日本でも出てきています。
日本で使われている生活用水は、主に雨や雪によりできた川の水がダムなどに貯水され活用されています。地球温暖化による降雨量の変化や雪の減少による雪解け水などの減少に伴い、川の水量が減ってきています。
その結果、ニュースなどでも取り上げられていたようなダムの水不足が発生し、水の普及が困難となる事態が発生し始めているのです。また、水道技術研究センターが公表しているデータでは、世界を対象に1人あたりの生活用水使用量は、日本は第2位という結果も出ていることも今後の課題となります。
使った後の水の行方にも課題
日本には下水道における課題も挙がっています。日本下水道協会のデータでは、全国の下水道普及率は概ね80%を超えています。
社会科の授業でも習ったように、トイレや洗濯、台所などから使用された生活用水は下水処理場で自然衛生上安全な状態で川や海に流されます。
しかし、逆の視点では20%の使用後の生活用水は処理できていない状態で排出されていることを意味します。下水道普及率を100%することが、目下の課題となります。
6つの課題
SDGsの主要テーマの一つ「06.安全な水とトイレを世界中に」には、大きく6つの課題が設けられています。ユニセフで公表されている内容をご紹介しております。
- 2030年を目標にすべての人が安全な水を安い値段で利用できるようにする。
- 2030年までにすべての人がトイレを利用できるようにし、屋外で用を足す人がいなくなるようにする。女性や、高齢者、障碍者など弱い立場にある人が何を必要としているのか注意する。
- 2030年までに汚染を減らし、ゴミが捨てられないようにする。有害な化学物質が流れ込むことを最低限にし、処理しないまま流す排水を半分に減らす。世界中で水の安全な再利用を大きく増やすなど、取り組みによって水質を改善する。
- 2030年までにより効率よく水を使えるようにし、淡水を持続可能な形で利用。水不足で苦しむ人の数を大きく減らす。
- 国境を越えて協力して、あらゆるレベルで水源を管理できるようにする。
- 山や森林、湿地、川、地下水を含んでいる地層、湖などの水に関わる生態系を守り、回復させる。
一人一人が真剣に向き合おう
ここまでのSDGs課題や世界の現状、日本での水不足の予兆などを目の当たりにしたことで、何かしらできることがないかと考えたいものです。2025年には世界人口の3分の2以上が水不足の問題に直面するとの予測もされており、誰一人として他人事と言える問題ではない状況です。
今後も世界では人口は増加することでしょう。しかし、地球上の水の量はこれからも変わらず有限です。こうした状況下で、一人一人何ができるだろう?ほんの少しでも意識をもって生活に臨むことが、SDGs課題解決の大きな成果につながります。