日本におけるSDGsへの取り組み状況

日本におけるSDGsの取り組み状況
沢村愛弓

昨今テレビやSNS、企業組織などからも見聞きする機会が増えてきているSDGs。今回は、日本国内におけるSDGsに関する現状と問題となっているポイントに焦点を当ててご紹介してみましょう。

目次

SDGsの日本における認知度

そもそもSDGs自体が日本国内でどれくらいの認知度があるのでしょう?朝日新聞社は、毎年5千人を対象に「SDGsという言葉を聞いたことがあるか」と題するアンケート調査を実施しています。まずはその結果と推移を見てみましょう。

「聞いたことがある」との回答年別推移
2019年8月:27.3%
2020年12月:52.7%
2021年:76.3%

「聞いたことがない」が年別推移
2019年8月:72.7%
2020年12月:47.3%
2021年:23.7%

次に、電通社が実施している「SDGsに関する生活者調査」の結果も合わせて見てみましょう。こちらは、10から70代の男女各100名の全1,400名を対象に実施された調査となります。この中で、SDGsを「知っている」との回答から理解度ごとに分けたものをまとめています。

2020年1月実施調査
「内容まで含めて知っている」:10%
「内容はわからないが名前は知っている」:19.1%
合計29.1%

2021年1月実施調査
「内容まで含めて知っている」:20.5%
「内容はわからないが名前は知っている」:33.8%
合計54.2%

朝日新聞社と、電通社のアンケート結果を続けて見比べてみたところ、いずれも2020年から2021年にかけて急激にSDGsへの知名度が伸びています。

考えられる要因として最も大きなものは「新型コロナウイルス」です。同時期に始まったコロナ禍により、感染対策における健康面への配慮、流通の停滞による物資の重要性といった部分が、国民個々人においても無関係ではない状況となったことでしょう。

こうした状況に重なる頃から、テレビ番組をはじめとするメディアがSDGsをテーマとして取り上げています。また、各企業においても経営戦略の中にSDGsを取り込み、様々なホームページやSNSで情報発信するようになったことが考えられるでしょう。

どんなきっかけであれ、多くの人がSDGsへの関心を持ち始めていることはよい傾向と言えます。一方で、電通社のアンケートからもSDGsについての「理解度」においては、まだまだ浸透していない現状と言えます。

さらに、国連の持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)から、毎年「SDGs達成度世界ランキング」と題する、世界各国のSDGsへの取り組みをランキング形式にした情報が提供されています。

同ランキングによると、日本の順位は、2019年度は15位、2020年度は17位、2021年度は18位と推移しており、徐々にランクを下げ続けているのです。理由として挙げられているのは、他国のSDGsへの本格的な取り組みが進んでいることです。

日本に求められるSDGs

国連が2015年以降毎年公表している「SDGs報告書」に、国別のSDGsへの取り組み評価が記載されています。

報告書は17のSDGs課題ごとに評価されており、対象国内での達成状況の把握ができるというものです。
2021年度の報告書によると、日本には5つの課題が存在します。それぞれの課題の詳細と解決にかかるポイントを順次まとめていきましょう。

5:ジェンダー平等を実現しよう

2021年度の世界男女格差指数(ジェンダーギャップ指数)で、日本の順位は156か国中120位と低い結果が出ています。

その原因として挙がるのは、女性の政治参加率の低さや、男女間での収入格差です。また、家事や育児への理解の面も近年改善されているものの、他国と比較するとその格差の度合いがわかります。

男女の収入格差問題や家事育児が女性だけに課せられるものではないといった認識と理解を個々人で持つことと、女性がより社会で活躍できる環境づくりが求められています。

13: 気候変動に具体的な対策を

気候変動への悪影響は、先進国のいずれにおいても課題となっています。原因の一つとして挙がるのは、二酸化炭素排出量です。

JCCCA全国地球温暖化防止活動推進センターの統計データでは、日本の二酸化炭素排出量は世界の3.5%との結果が出ています。産業の発達している先進国では燃料の消費が多くなるため、二酸化炭素やメタン、温室効果ガスによるフロンの排出も比例して多くなっています。

再生可能エネルギー活用の取り組みや、リサイクル技術の導入は課題解決に重要な鍵となるでしょう。

14:海の豊かさを守ろう

国連環境計画(UNEP)の調査によると、日本のプラスチック包装廃棄量は35トンで世界2位となっています。

ゴミとなったプラスチック資源が海に流れ着き、水質汚染につながってしまっています。
同時に、日本では魚の乱獲問題もあり、海と海洋生物への悪影響が大きいことが課題として挙がっているのです。

一人一人がゴミの不法投棄をやめることはもちろんのこと、プラスチック製品自体の使用量についても改善の必要がある現状です。

15:陸の豊かさを守ろう

日本において、都市開発や狩猟、外来種などの影響で絶滅または絶滅が危惧されている陸上・淡水エリアの生物が存在します。

例えば、オオカミの減少により鹿が増加したことで、鹿が樹木や山草を食べつくし、森林環境に影響が発生しているという具合です。

また、海外からの人工林の輸入が、日本の自然環境に悪影響を及ぼしている状況です。人工林により国内の木材の需要が減少。これにより、管理が放置されて根が安定しない雑木林となり、集中豪雨時に土砂災害の増加となっているとのことです。放置された雑木林にはうまく太陽光が指さず、生物の生活にも影響が派生することになります。

各自治体では、自然環境回復を目指す活動も積極的に行われていますが、人手不足が否めない状況であることも問題の一つです。

17:パートナーシップで目標を達成しよう

日本の大きな課題のひとつとして、少子高齢化が挙がります。少子高齢化で社会進出する若い人手不足が発生、経済の発展や技術開発の面で大きな障害となっている現状です。

こうした経済問題は、政府機関だけ企業組織だけが取り組んだところで効果は期待できません。IT技術を駆使し、各政府と企業組織間、さらには他国との連携が課題解決に重要となります。

まとめ

日本国内でのSDGsにまつわる現状から目下の課題を見てきました。

まだまだSDGs自体の存在が認知され始めてきたというレベルで、人々に浸透し実際に行動につなげるという段階までには時間が必要かもしれません。世界規模での課題であることから、個々人での活動に大した意味を見出せないと判断してしまう方もいるかもしれません。

しかし、何かをきっかけにSDGsについてであったのなら、もう少し自分なりに情報を収集してみてください。その中で、自分にもできることが見つかるかもしれませんし、世界や日本の課題を知ることに損はないはずです。

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この記事を書いた人

SDGsプロデューサー

企業や自治体が推進するあらゆる分野のSDGsをサポート。新しい視点でのSDGsをプロデュースすることが得意。

野菜ソムリエとして様々な媒体の料理監修やレシピ開発、編集業務に携わる中でSDGsに出会い、その魅力と重要性に気づいてSDGsの勉強をはじめる。現在はデータセクショングループ株式会社MSSで「SDGsプロデューサー」として活動中。

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