「男女平等」と謳われ、女性の政界進出や管理職登用促進、男女収入格差、育児支援、女性の働き方改革、イクメンなど様々な取り組みや対策が進められている様子をニュースなどから目にすることが少なくないでしょう。
しかし実際はどうでしょう?
周囲を見渡してみても、「男性だから~、女性だから~」が由来する状況や出来事はまだまだ見聞きすることは多いのではないでしょうか?残念ながらテレビやニュースなどで話題に上がっている時点で、それは「めずらしい取り組み」という見方ができてしまうのです。
今回は、性別の違いで今なお続く国内外の課題について掘り下げつつ、昨今話題となっている世界共通の課題「SDGs」の内容にもふれてご紹介していきます。
ジェンダー平等を実現しようの概要
SDGs17の課題のひとつである「ジェンダー平等を実現しよう」についての概要を順次ご紹介します。
まずは「ジェンダー」の定義を日本の例に重ねて確認してみましょう。「男性は外で仕事をして稼ぐ、女性は家庭や子供を守る」という考え方は、多くの方が見聞きしたことがあるかもしれません。
また、2021年東京五輪パラリンピック組織委員会の前会長が女性に対する差別発言をしたことで大きな話題となりました。
いずれもジェンダー問題の一例です。
このように「男性はこうあるべき,女性はこうあるべき」という,風潮や決めつけなどの違いを「ジェンダー」と表現されます。日本を含めた世界各国で、ジェンダー問題により社会生活全般において時に区別され、時には差別され苦しむ人々が大勢います。
「世界のジェンダーによる区別や差別をゼロ」にすることが最終目標となります。そして同時に、「女性が活躍できる社会づくり」を目指すことも含まれています。
世界のジェンダー問題と原因
ジェンダー問題により、日本を含む各国において多く発生している問題には以下が挙がります。
・男女の賃金格差
・政治や経済においての重要な意思決定の際の低い女性の参加率
・セクハラやモラハラ
・偏見による社会的役割
・男性優遇の法令
世界で実際に起こっているジェンダー問題の事例をご紹介します。
まず、アフリカの広域で行われている「FGM(Female genital mutilation)」についてです。
FGMは、幼児期から15歳ごろまでの女子を対象に行う通過儀礼のひとつのようなもので、女性性器を切除するというものです。行われる理由にはいくつか説があるようですが、「女性は結婚するまで純潔でなければならない」「女性は家庭に入るべき」など女性の性衝動を抑止することとされています。他国の働きかけにより減少傾向にあるものの根絶には至らず、施術の後遺症で苦しむ女性は2億人を超すと言われています。
また、ヒンドゥー教の「サティー」という風習も例に挙げます。
サティーでは、夫が亡くなり火葬される際にその妻も一緒に生きたまま焼かれるというものがあり、2008年ごろまで実際に行われていた地域があるといいます。
ジェンダー問題がなぜ起こるのか?
前述したように、多くの人々の中にある男性女性それぞれに対する固定概念が最も大きい原因です。その要因となるものとしては、国ごとの習慣や宗教、思想の違いといった文化の違いが関わってくる根深いものもあります。
また、メディアやニュースなどの情報により社会的な印象付けなども、時には大きな偏見や誤解を生む要因となっていることも少なくありません。
ジェンダー平等「6つの課題」
世界の共通課題SDGsの課題の中に「ジェンダー平等を実現しよう」が組み込まれた理由は、前述したように世界におけるジェンダー問題が深刻なレベルに差し掛かっていることは言うまでもありません。
こうした現状の解決のため、共通した具体的な6つの目標設定がされています。
- 世界の女性と女児へのあらゆる差別をなくす。
- 世界の女性と女児へ、公共私的空間におけるあらゆる暴力を排除する。人身売買や性的暴行、搾取など
- 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚、および女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。
- 公共のサービス、インフラ、および社会保障政策を提供。各国の状況に応じた家庭内における責任分担をし、育児や介護、家事労働を互いに認識評価する。
- 政治、経済、公共分野でのあらゆる意思決定において、女性の参加と平等なリーダーシップの機会を保障する。
- 国際的な会議により決定した内容に沿って、性や出産に関する健康と権利の保護が可能な体制を確立する。
前述した事例など見てもわかる通り、ジェンダー問題による影響が大きいのは女性です。
いずれの課題も、女性の社会的自由や健康、安全、進出を保護することを目的とした内容となっています。
日本の取り組み状況
「ジェンダーギャップ指数」という国ごとの男女格差を数値化したひとつの目安となる指標があり、スイス非営利財団世界経済フォーラム(WEF)から毎年公表されています。2021年度のランキング1から3位はアイスランド、フィンランド、ノルウェーと並んでおり、一方の日本の順位は156ヵ国中120 位で、主要7カ国では最下位という結果が出ています。
日本政府では、「2030年までに国会議員や民間企業における指導的地位の女性割合を30%にする」という目標を掲げられており、国内の上場企業をはじめ様々な組織内では、女性の登用をはじめ、育児支援、中途採用など女性が買う着できるための環境づくりに向けた取り組みが進められています。
しかし残念なことに、ジェンダーギャップ指数ランキングからもその成果は芳しくなく、実際はジェンダー平等の環境づくりにおいて世界から大きく後れを取っている状況なのです。ジェンダー問題は、国ごとの習慣や宗教、制度が関わっていることもあり、個人の取り組みによる即効性には期待できないでしょう。
一方で、政府や企業組織の有権者だけの意識改革だけで解決を至るほど単純な問題ではなく、やはり一人ひとりの理解と協力が最重要事項です。
個人ができるジェンダー平等への取り組み
ジェンダー平等を目指す上で最も重要なのは、個人個人の「男性は~、女性は~」という認識を改善することにあります。しかしながら、最大の難点として、人の持つ認識は育った環境によって時に大きく誤差が存在しているケースが少なくありません。
例えば、ランドセルの色が「男の子は黒、女の子は赤」と決まっている地域が今も少なくありません。これに対し、「どうして男の子は黒で、女の子は赤なの?」と不快に感じる人もいれば、「僕は黒でいい」、「私は赤でいい」と特に気にしない人もいるでしょう。
こうしたベースとなる認識の違いから、個人だけでの意識の改善は、時に別の誤った認識を持ってしまう可能性も考えられます。
対策としては大きく2つの方法があります。
・家族、友人、隣人、職場など周囲の人たちと、話し合いの場をつくる
・NGO団体が実施している勉強会やプログラムに参加する
ジェンダーによる不平等を感じる人にとって、世間の風潮や、置かれている状況によっては自身の意見を言いにくいという状況は非常に多いでしょう。もしかすると思い込みや習慣が、時に無自覚の悪意となって誰かを傷つけ苦しめているかもしれません。
まずは、男性女性問わず、すべての人が意見を発信しやすい環境づくりをすることです。そして、繰り返し意見を出し合うことで、ジェンダーに対する認識の誤差をゼロに近づけることで、より尊重し合える関係値を気付くことが可能となるはずです。
また、国内外のいくつかのNGO団体においてはジェンダー問題をテーマに取り扱うセミナーやプログラムが企画されており、定期的に参加者を募集しています。
こうした活動に参加してみることで、世界と自国、個人におけるそれぞれの課題に対して認識の共通化を図れることでしょう。