SDGsへの関心が高まる中、その必要性や内容に疑問を抱えている方も一定数いるのも事実です。今回は、SDGsにもたれている問題点に焦点を当て、世界と日本それぞれに分類してご紹介します。少しでもSDGsに関する問題と疑問が解消できれば嬉しいです。
SDGs世界の問題
テーマの規模が大きすぎる
SDGsは17の課題で構成されています。一部取り上げると、「貧困をなくそう」、「飢餓をゼロ」、「気候変動に具体的な対策を」、「海・陸の豊かさを守ろう」などです。
いざ取り組もうとした際、明らかに個人どころか、企業、国が総力をあげても解決できるものではないのは明らかです。こうした課題の壮大さを目の当たりにしたとき、現実的に実現は困難と判断されてしまうのも無理はないことかもしれません。
目標値への疑問
SDGsは17の課題で構成されており、それぞれのテーマに具体的なターゲットや目標数値が設定されています。しかしながら、課題ごとに設定された数値が何をもって導き出されたのかといった部分に疑問を持たれています。
また、価値基準の違いから、目標とされる対象に当てはまる場合と当てはまらない場合など、国ごとで取り組み内容にバラつきが起こる可能性が考えられます。
先進国以外は取り組むのが困難
途上国においては、国内の財政面から生活インフラ、人々の生活の維持も厳しい状況下にあるケースも少なくありません。その状況下での、SDGsへの取り組みは非常に困難と言わざるを得ません。そのため、SDGs取り組むのは主に先進国が中心となってしまう点も問題視されています。
企業組織のコストが増える
SDGsへの取り組みは持続する必要がるため、時間や人手、費用のコストが発生します。また着地点も曖昧なこともあり、取り組みをいつまで続けるのかというゴールの見えないマラソンと化すことが懸念されてしまいます。
SDGs日本の問題点
日本においてもSDGsにまつわる問題点がいくつか存在しています。
代表例として、2つをそれぞれご紹介していきます。
認知度と理解の低さ
まずは、日本国内でSDGsについてまだまだ認知度と理解が進んでいないことです。
朝日新聞社が5,000名を対象に実施したアンケート「SDGsという言葉を聞いたことがあるか」によると、「聞いたことがある」との回答率が2019年27.3%、2020年52.7%、2021年76.3%との結果となっています。
続いて電通社が1,400名を年代ごとに調査した「SDGsに関する生活者調査」の結果では、「内容まで含めて知っている」との回答率は2020年10%、2021年20.5%という結果がそれぞれ出ているようです。
テレビやマスコミ、企業PRなどから徐々に国内の「認知度」自体は増加傾向にあるのは好ましいことではありますが、全体的な「理解度」の低さから積極的に取り組む人々との意識や認識の面で温度差が発生しているのが現状です。
SDGsウォッシュ
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、「SDGsウォッシュ」についてご紹介しましょう。これは、SDGsに取り組む企業において近年問題視されていることで、要するに「やっているフリ」です。
SDGsに取り組むことで、周囲からの信用獲得やイメージアップ、新たなパートナーとの連携といった企業にメリットがあるのは事実です。これらのメリットに加え、昨今の「SDGsブームに乗っかる」といった企業が残念なことに一定数存在しているため、SDGsウォッシュという言葉が誕生してしまったと言えます。
この一番の原因は2つ、「事業内容とのギャップ」と「SDGsへの理解度の低さ」が考えられます。
例えば、IT事業を展開する会社が「自然環境の回復を目指す」と掲げたところで、周囲は取り組みと事業との共通点を見出せません。
また理解が低ければ、従業員からも取り組む必要性や生じる手間、コストに疑問が生まれてしまうでしょう。こうした現状は、実際に数字としても表れ始めています。
国連から毎年「SDGs達成度世界ランキング」が公表されており、日本の順位の推移を見てみると、2019年度は15位、2020年度は17位、2021年度は18位とランクが下がっています。その原因として考えられているのは、他国においてSDGsへの理解が進むことで取り組みが本格化したことです。目先の利益だけを追い求めず、組織内の連携を高めて等身大の事業計画を進める。それだけで解決できる問題です。
SDGsの問題を解決するには
SDGsへ取り組む上で、「継続する」ことと「ひとりで達成するものでない」という点が大切になります。これを踏まえて、これまでに挙げてきた問題点を振り返ってまとめていきましょう。
テーマの規模が大きすぎる
一部の国や大企業だけが取り組んでも大きな効果は期待できません。国内でのSDGsへの理解と関心を進めるとともに、各企業組織内での情報共有を進めることで一人一人に無関係ではないと認識してもらうよう目指します。
先進国以外は取り組むのが困難
先進国がどうしても取り組みの主導を握ってしまいがちです。国家間での連携の頻度を増やしたパートナーシップを強化することが解決の鍵になります。
目標値への疑問
立場や考え方の違いから取り組みのスタート地点が異なるのは仕方ないことです。個人でも企業組織にしても、それぞれが可能な範疇の数値と目標を明確にすることです。継続と連携を繰り返し、長期的に解決を目指すことが重要です。
企業組織のコストが増える
SDGsは強制ではありません。本業との両立を重視した計画はもちろんのこと、従業員への理解と協力が大事となります。
日本の問題
順調にSDGsが浸透しており、一部を除き社会問題への関心が高まっていることは数字からも明らかです。豊かで平和な日本においては、なかなか世界の現状に意識を向ける機会が少ないことが個人のアクションまで行きつかないことが考えられます。政府の広報や、実際に取り組む企業や個人の活動内容がどんどん共有されていくことで、個人での意識の高まりにつながることが期待されます。